紺野機業場の挑戦Challenge
「川俣シルク」を用いて制作した茶室空間と衣装により、「川俣シルク」の魅力を新たに感じていただく茶会イベント「繭の茶室」茶会 ―めぐり― を京都と福島で開催しました。
コンセプト
蚕は、メビウスの輪のように円運動を繰り返しながら糸を張り巡らせ、繭を形成していきます。途切れることのない糸は、長さ約1500m ともいわれ、自らを守る尊い空間です。希少な国産シルクを用いた織物で構成する「繭の茶室」は、繭の構造から着想を得て、竹の躯体に極薄の二重織「川俣シルク」を張り巡らせて制作した茶室空間です。また、茶人が着用する衣装には、古法の藍染めと貝紫で染めたシルク生地や糸をシルクオーガンジーと掛け合わせ製作しました。
透明感のある柔らかな円形の空間に包まれ、一服のお茶をいただきながら過去・現代・未来へと脈々と続く絹文化と人々の営み、そして自然界に思いをめぐらせる場となりますように。
京都開催 | ⽇時:2019 年12 ⽉19 ⽇(⽊) 場所:有斐斎弘道館(京都市上京区上⻑者町通新町東⼊ル元⼟御⾨町524-1) |
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福島開催 | ⽇時:2020年1 ⽉26⽇(日) 場所:21世紀記念公園麓山の杜「麓山荘」(福島県郡山市麓山1-16-17) |
開催報告
数寄屋建築の中に、川俣シルク生地を使った繭の形を模した茶室空間を作りあげるところから茶会は始まります。絹糸の製糸行程で発生する「きびそ」と呼ばれる糸を使い、竹の躯体を1本1本手で結び、極薄の二重織りの川俣シルク生地で包みました。極薄の生地なので、中の様子が透けて見えるのですが、その光の入り具合が絶妙に美しく、見る時間帯に応じて光の入り方が変わり、様々な表情を見せてくれました。茶室に用いた生地は群馬県の碓氷製糸で国産繭から製糸した絹糸を使用して織り上げています。
この茶室空間は、建築家の大橋史人さんに設計いただきました。毎回茶会のたびに一から組み上げるため、竹の組み方や作るメンバーなどによって形状が変わる設計となっています。そして設営する会場も京都と福島では異なるため、京都会場の有斐斎弘道館では、建物のクラシックさの中にダイナミックな繭の茶室が誕生し、一方、福島会場の麓山荘では、明るい天井や柱の空間の中に緻密な構造の繭の茶室ができあがりました。
そして茶会が終わると繭の茶室は解体され竹とシルク生地に戻ります。毎回茶室に入るお客さまも変わり、まさに“一期一会”の茶室空間です。
茶人の衣装用生地は、宮崎県の綾の手紬染色工房の秋山眞和さんと弟子の二上拓真さんによって天然の高貴な染めが施されました。参加者から「まさしく天女のような高貴な茶人であった」と感想をいただいた茶人の衣装は、服飾デザイナーの鷲尾華子さんがデザイン。今回のイベントは、使用するもの全てが川俣町を中心とする日本のものづくりでご用意した茶会となりました。
茶会では、有斐斎弘道館の太田逹先生と茶人の三窪笑り子さんそしてクリスティーナさんによるおもてなしで参加者にお茶菓子と茶室空間でのお茶を楽しんでいただきました。待合から茶室までの空間の中に、季節の訪れや茶会のコンセプトなどを軸や活ける花、桑と繭をイメージしたお茶菓子できめ細やかに演出いただき、最高のおもてなし空間となりました。
お茶を楽しんでいただいた後に、川俣の現状について説明をしました。古来の川俣シルクは織りにおいて水を使用するため、風評被害があること、最盛期には約200社近くあった川俣シルク事業者も今は4社となってしまったこと、日本の伝統産業を下支えしていることから未来に残していくことを積極的に行っていかなければならないことなどを参加者へ伝えました。参加者からは「茶会のコンセプトに共感した」「シルクの空間を体感して美しい気持ちになった」「紺野専務のお話を聞いて感動しました。その熱い思いが日本全国の皆さんに届くとうれしいです」「とても貴重な体験でした。多くの方々が協力して催しを行っているのがすばらしいです」などのコメントをいただきました。
今回の取り組みを通して
この企画の発端にあるものを協力してくれたメンバーにも正確に伝えたかは定かではない。
全国の絹織物を行う会社が次々に辞めていく中で、紺野機業場がすばらしいもの持っていますなんてPRはどうでもよかった。
日本を見渡せば蚕糸業は壊滅状態。絹織物業は年々衰退し、福島で営むわれわれは明日続ける希望をどこにおけばいいのか
わからない状況だった。100年継続することが出来た川俣の老舗も岐路に立たされている状態だった。
101年目に何をすることがわれわれにとって必要なのか。
行き着いた先は日本文化の下支え、そして絹文化に従事し、自分たちが先人たちから受け継いだものは日本人にとって未来に必要となるものなのかという問いだった。そう考えた矢先に群馬の碓氷製糸より細番手絹糸の一番のエキスパートである弊社に国産シルクを織って評価して欲しいという依頼が入った。最大の問いかけを用意するのに必要な因子が揃い、デザイナーの鷲尾氏とプランナーの根本氏と企画を練りに練ってこの会は出来上がっていった。
今回この取り組みを実施する中でこの企画に賛同し協力してくれた人たちがたくさんいた。
きっと皆が根幹のところを正確に知ることはなかったであろうが、日本人としての文化の継承に何かしなきゃという想いから「ワクワク」とか「やれば何かが起こりそう」という期待感のもとについてきてくれた。
そして体感していただいた参加者から、うれしい言葉もさることながら、「紺野さんが消えたらどれだけの業界が消えると思ってるの?」という激励もいただいた。101年目に掲げた問いはなんとなく解が見えたような気がした。
日本人は決して日本人としての感性や日本人の心を捨てたわけではない。きっと知らなかったことや、感じてみたら日本人として居心地のいい古の世界があることを再認識できる素質が内にあることに気づいた。
今の生活や暮らしの中でどこかで欲しているのに出会うことが出来ないものなんだと気づいた。
美術や工芸で暮らしから遠い存在となってしまった文化
紺野は101年目のこのチャレンジを機に次の向かう先へ精進してまいります。
この機会に出会うチャンスを得られなかった方や、次回を期待する方はぜひ紺野にお問い合わせください。
また皆さんが自社SNS等に応援メッセージをいただけると、3回目が実現できるかもしれません。
応援よろしくお願いいたします。福島にも是非足をお運びください。
All Japan Silk Project参画事業者
発起人・機織 | 有限会社 紺野機業場 |
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製糸 | 碓氷製糸株式会社 |
染色 | 綾の手紬染織工房 |
企画・デザイン | HANA DESIGN ROOM |
茶室躯体設計 | 大橋史人 |
撮影 | 宮下直樹 |
PR | 本田屋本店有限会社 |
その他
太田達、三窪笑り子、クリスティーナ、中島、沼田雄一、大橋めぐみ、ハタノワタル、山越じゅん子etc....